スモール・ワールド現象(small world phenomenon, small world effect)は、知り合い関係を芋蔓式に辿っていけば比較的簡単に世界中の誰にでもいきつく、という仮説である。敢て日本語にすれば(広いようで)「世間は狭い」現象である。
この仮説は社会心理学者スタンレー・ミルグラムが1967年に行ったスモールワールド実験 (small world experiment) で検証され、その後この仮説をもとに「六次の隔たり(6 Degrees of Separation)」という有名なフレーズが生まれた。この実験ではアメリカ合衆国国民から二人ずつの組を無作為に抽出し、平均すると6人の知り合いを介してその二人が繋がっていることを実際に示した。
しかし30年以上たった現在でも、均質化されていない(heterogeneousな)ソーシャルネットワークの間においてはどうなのか(前記「世界中の誰にでも」の類)、いまだに決着がついていない。その種の実験はミルグラムの論文以来殆ど行われてこなかった。
ミルグラムの実験を契機に様々な新発見がなされた。送る方法にも多くの洗練が加えられた(手紙や小包の見た目の価値が、人がそれを転送しようとするかを決める鍵になる因子だった)。ミルグラムは成功率を35%にまで高めることができ、後の研究者は97%の成功率を達成している。「全世界」が小さいかどうか疑問があるにせよ、全世界のなかには小さい世界が数多く存在することはほとんど疑いの余地がない。このような繋がりの間に入る知り合いの人数は平均すると6であった。
■「ファンネリング」(funneling、煙突の吸い上げ、漏斗の窄まり)効果
平均以上のコネクションを持つ少数の「スター」 (star) がおり、彼等の手によって主な転送(即ち「繋がり」)がなされること
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派生して、「エルデシュ数」(数学者は共著関係によって自分とポール・エルデシュとの距離を示す)、「ベーコン指数」(俳優ケヴィン・ベーコンによって映画の共演関係を元にした同様の調査によるケヴィン・ベーコンとの六次)なんてものも。